読後「やられた」と口にしてしまう
ある日、古本屋に足を運んだところ、50円でたくさんの本が売られているのをみつけました。なんとなく眺めていると『模倣の殺意』という一冊が目に留まりました。作者は中町信さんというらしい。うーん、聞いたことないなぁ、でも50円ならいいか。と、その一冊を買ってみることにしました。
作家の坂井正夫が自殺をした。その自殺の真相を追う二人の人物、中田秋子と津久見伸助。この二人の視点を交互に描きつつ、物語は進んでいきます。
読み終えて、わたしはつい「やられた」と口にしてしまうことになりました。
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読み終わってみれば、非常にシンプルなトリックなんだけど、だからといって簡単に見破れないのがくやしいところ。そしてネタバレになってしまうから、詳しいことを書けないのも、またくやしい。
なんせ真相が描かれる第四部の扉には、こんな言葉が書かれているくらいなんだから。
あなたは、このあと待ち受ける意外な結末の予想がつきますか。ここで一度、本を閉じて、結末を予想してみてください。(中町信『模倣の殺意』)
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作者からこんな挑戦状をたたきつけられて、いままでいろんなミステリー小説を読んできたわたしは、よし見破ってやろう、と意気込みました。しかしものの見事に欺かれ、「やられた」とまで言わされたわけです。
こんな楽しい読書体験をさせてくれた『模倣の殺意』に出会えてよかった。それにしても、これは50円で売っていいようなものではないんじゃないかなぁ。
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