ゲームにまみれて、本にまみれて。

ゲームと本にまみれた、日常の話。

『モンハン』のせいで先輩に毒を吐くことになった、大学のときの思い出

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バイト先の人たちと打ち解けられない私

 

これは、私が大学生のころ。飲食店でアルバイトをしていたときの話。



私は大学生になって、人生で初めてのアルバイトをした。

ショッピングモールの飲食店街に入っているような、チェーンの飲食店だ。



私は人と話すのが苦手で、厨房での勤務を希望したが、店長の意向でなぜかホールで働くことになった。

 

そもそも人に対して心を開くのに時間がかかるタイプである。職場の人とも、必要最低限の世間話はしても、それ以上は話さなかった。



そんな中、厨房で働く二人の先輩とは、完全とは言えないが、多少は打ち解けていた。

 

一人の先輩は、私より2歳上で、中学生のとき同じ部活だったから面識があった。

そしてもう一人の先輩は、中学の先輩の、高校の先輩にあたる人で、私より3歳上。

面識はなかったが、先輩づてに話すようになった。



ある日、まだアルバイトを始めて間もないころ。慣れないながら仕事をこなしていると、その二人の先輩の会話が聞こえてきた。

 

何の気なしに聞いていると、どうも『モンスターハンターポータブル 2ndG』の話をしているようだった。

 

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『モンハンP2G』といえば、モンハンブームの火付け役ともいえる作品。私が高校生のころに発売され、放課後の教室でクラスメイトが楽しそうに遊んでいるのを見て、私もPSP本体とともに購入した。

 

それからしばらくが経っていたが、この先輩二人は、遅ればせながらモンハンデビューをしたようだった。

 

そんなことを聞いていると、突然会話のボールが私の方に飛んできた。

 

「オガタくんは、モンハンとかしないの?」




なぜだろうか。

 

気づくと、先輩二人とモンハンをする約束が取り付けられていた。

 

 

睡魔と戦うモンハン大会

 

それからしばらくして、その日を迎えた。

 

アルバイトを終えた私は、3歳上の先輩の自宅に向かった。



窓が一つだけある、広くも狭くもない、けれど3人が入るには充分な広さの部屋に通された。

 

そして22時。三人が揃ったところで、深夜のモンハン大会の開始である。



先輩二人は、私よりもプレイ時間は短いはずだが、ランスや狩猟笛など、多彩な武器を使う。

 

それに対し、私は大剣しか握ったことのない脳筋だ。

 

このときも、勘を取り戻しつつ、せっせと大剣を振るった。

 

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最初は簡単なクエストをこなしていたが、夜も深くなってくるころには、難易度の高いクエストに潜るようになっていた。

 

そんな頃になってくると、ある問題が出てくる。

 

睡魔だ。

 

アルバイト終わりということもあり、猛烈な眠気に襲われ始めた。

しかし、一緒にいるのは先輩。さすがに先輩を前に、眠りこけるわけにはいかない。

 

そうは思っても、眠気はあらがえないもの。

 

視界は、ふわふわとし、遂に閉ざされてしまった。

 

ところが、ここで大剣を装備していることが活きた。



モンハンには様々な武器があるが、大剣を装備しているときにLボタンを押すと、ガードをするのだ。

 

ガードをしている状態で攻撃を受けても、ダメージは最小限に抑えられる。

 

これなら、寝てしまっても、攻撃を受けてしまうことはない。



大型のモンスターが暴れ狂う地のど真ん中で、ガードの構えで立ち尽くす私。



そんな私を現実に引き戻す一言が放たれた。

 

「ちょっ、寝てる寝てる!」

 

ハッと目を開くと、私の方に突進してくるモンスターの姿があった。

 

もう回避することはできない。

 

私は覚悟を決めた。



しかし、そんな現実の私とは裏腹に、画面の中の私のキャラクターは、見事にモンスターの突進を防いだ。



『寝ガード』ここに爆誕である。



さすがに、ぶっ続けだと限界があるため、少し休憩を挟みつつ、それでも何度も何度もクエストに潜り続けた。




失礼ですが、言わせてください

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高校生のころ、何度か友人とモンハンをしたことはあるが、休日に集まって少しだけ遊ぶ程度だった。

 

時間を忘れて、これほどまでに楽しんだのは初めてだった。




いや、嘘だ。

時間を忘れていたのは先輩二人だけである。



先にも書いたが、この部屋には窓が一つある。逆に言えば一つだけしかない。

 

先輩二人は、そのたった一つしかない窓に背を向けて座っていた。

その先輩たちと向かい合うように座った私。

 

私には見えていた。

 

だんだんと窓の外が明るくなっていくのを。



満足いくまで楽しんだところで、この日はお開きとなった。

 

朝8時のことである。



私と2歳上の先輩は、帰宅することになり、3歳上の先輩は見送りに出てくれた。

 

顔を出したばかりの日差しが、冷たい空気に少しの暖かさを与える朝。

眩しそうな顔の先輩が「いやー、眠い」と呟いた。



私は言った。

 

「先輩に対して失礼なのはわかっていますが、言わせてください。」



「馬鹿じゃないんですか。」




この日から、私は先輩たちとさらに仲良くなった。