ゲームにまみれて、本にまみれて。

ゲームと本にまみれた、日常の話。

転んでできた生傷を 歯ブラシで擦ると痛い

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高熱がでるくらいには泣くことになる

子どもの頃とかって、走り回ってて、転んじゃって、手やらひざやらに生傷をつくっちゃうことってありますよね。もし、そのできたばかりの生傷を歯ブラシで擦ったとしたら、ええ、痛いですね。

 

っていう、ごくあたりまえの話。

 

*****

 

小学校低学年のころだったと思います。わたしは近所の公園で、幼稚園からの友だちと二人で遊んでいました。今でこそ遊具は撤去されて、がらんとした公園になってしまっているのですが、その当時はブランコや滑り台、シーソーなどがあって、小さいながら充実した公園でした。

 

わたしたちは楽しく遊んでいたのですが、そんな楽しい空間が、一瞬にして戦慄の空間へと変貌してしまったのです。

 

わたしの視界の端に黒い大きな影が見え、そちらに目をやったところ、黒い大きな犬が公園に駆け込んでくるところでした。一瞬で「やばい」と悟ったわたしは、一目散に駆け出しました。犬を相手に直線で走っても勝ち目はないだろうという、冷静だかなんだかわからない思考がはたらき、わたしは滑り台の周りをぐるぐると逃げ回りました。

 

途中、滑り台の上から友だちの声が聞こえてきました。さいしょから滑り台の上にいたのか、隙を見て上ったのかはわかりませんが、彼は滑り台の上にいて、私にも滑り台に上るようにと、叫んでいるのです。

 

んな余裕はない。

 

わたしは勝ち目のない勝負に挑み続けましたが、小学校低学年の体力なんて高が知れているもので、数分ともたずに疲れ切ったわたしは、最終的につまづいて盛大にぶっ転んだ。

 

そこからの記憶は曖昧ですが、おそらく友だちに連れ帰られ、母に説明してくれ、そして事情を知った母に近所の病院へ連れていかれたんだと思います。記憶がはっきりしたのは病院についてからでした。

 

*****

 

ひざにできた傷の状態を確認した医師は、これから行う処置をわたしに説明してくれました。

場所が公園だったので、傷口にはたくさんの砂粒が入り込んでいる、そのまま傷がふさがると皮膚の中に砂が残ってしまって見た目にも悪くなるので、砂粒を除去する必要がある。そんな説明をしたあと、わたしは二つの選択肢が与えられました。

 

1.麻酔をしたうえで、ブラシを使って砂粒を取り除く
2.液体窒素を使用したうえで、ブラシを使って砂粒を取り除く

 

液体窒素の使い方はいまいちわかりませんが、たぶん冷却して麻痺させるとかなんでしょう。わたしは「なにも使わずに、ブラシを使って砂粒を取り除く」という選択をしました。

 

いま考えると馬鹿でしかないんですが、とんでもなくびびりだったわたし。麻酔だの液体窒素だのと、わけのわからないものを並べられたところで、「はいそうですか」と了承するわけがありません。

医師、看護師さん、母。その場にいた大人全員が、さすがにそれは、とわたしを説得してきましたが、そんな口車にのってたまるかと、断固として拒否しつづけました。結果として「なにも使わずに、ブラシを使って砂粒を取り除く」というわたしの案が可決されることになりました。

 

痛すぎて、大泣きし、高熱だしました。

そりゃ痛いですよね、できたばかりのそこそこ大きな傷を直接ブラシで擦ってるんだもん。

 

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長かったのか短かったのかもわからない時間を過ごし、傷の処置は無事に終え、高熱でふらふらしているわたしは、母に連れ帰られました。

 

この無駄な頑張りの甲斐もあって、砂粒一つ残らずに傷は完治。でも傷の大きさのせいもあって、20年以上経った今でも皮膚が少し盛り上がっていて、その傷をみるたびに、傷を歯ブラシで擦る痛みを思い出します。