ゲームにまみれて、本にまみれて。

ゲームと本にまみれた、日常の話。

大人にこそ読んでほしい絵本『おおきな木』

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大学を卒業したときの贈り物

 

大学生のころにアルバイトをしていた飲食店では、少し不思議な風習があった。

 

大学を卒業するなどで、アルバイトを辞めることになると、そのお祝いとして運営会社からプレゼントが送られるのだ。

 

そこまでは、割と普通のことかもしれない。

 

しかし、そのプレゼントというのが絵本なのだ。

 

だいたいが大学を卒業するタイミングでアルバイトを辞めるから、22歳とか23歳ということになる。

 

もう充分に大人になっている人間に、なぜ絵本なのか。

それがアルバイト先で、ずっと疑問視されていたことだった。


私が卒業するときも、例によって絵本をもらった。

 

タイトルは『おおきな木』。

 

本が好きな私は、全く嬉しくなかったわけではないものの、いまさら絵本もないだろうと、ずっと封も開けずに置いていた。

 

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心に触れてくる絵本

 

それから幾年月が流れたある日、部屋を掃除しているとき、本棚にこの絵本があるのを見つけた。

 

なにか理由があったわけではないが、せっかくだから読んでみようと、数年越しに封を開けた。

 

そこには、シンプルに描かれた一本の木と少年、そこに短くもやさしい文章が添えられていた。

 

おおきな木と、成長していく少年の姿を描いた、この絵本。


もともとは海外の絵本であり、それを村上春樹さんが翻訳している。

 

 

村上春樹さんが書いたあとがきには、次のように書かれている。

 

あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。それをあえて言葉にする必要もありません。そのために物語というものがあるのです。

 

だから私も、どう感じたのか、どう解釈したのかを書くつもりはない。

 

ただ、いろいろと考えてしまうところがあった。

 

今まであったできごと。
今まで出会った人々。

 

この絵本は、私の中にある今までの人生で培ってきたものに、かすかに触れてきた。

 

だからこそ、読みながら年甲斐もなく涙してしまったのだ。

 

絵本は子どもだけのものではない

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今までの経験や境遇によって、読んだときの感じ方は変わるのではないだろうか。

年齢など、読むタイミングによっても、以前に読んだときと違う感じ方をするかもしれない。

 

もの悲しくなったり、優しい気持ちになったり。

 

そんな気持ちの変化から、自分を見つめなおすきっかけにもなりそうだ。

 

絵本は子どものためのもの。
そう思わずに、ぜひ『おおきな木』を読んでみてほしい。