ゲームにまみれて、本にまみれて。

ゲームと本にまみれた、日常の話。

登場人物に愛着を持ってはいけない『ハング』

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怒りや悲しみが前面に打ち出された重厚感のある作品

 

これまで、誉田哲也さんの作品はたくさん読んできた。

 

警察が中心に描かれた作品が多いため、怒りや悲しみの描写はたくさんある。

 

また、ハードな表現で、重厚感のある作品が多いのも特徴である。

 

しかし、そんな作品の中でも『ハング』は、群を抜いて怒りや悲しみが前面に打ち出されており、ハードさも他の作品を凌ぐ作品だと思う。

 

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序盤と終盤で浮き彫りになる物語の明暗

 

物語は、警察官の主人公が、同じ班のメンバーたちとキャンプを楽しむシーンから始まる。

束の間の、楽しい非日常。

 

そして、日常の警察の業務に戻っていく一行。

 

ところがそこから、今までの業務ではなく、主人公たちの日常が徐々に歪んでいくことになるのだ。

 

主人公が所属する班は、ある事件の犯人を自供により逮捕する。しかし犯人は、公判で自供を強要されたと証言を覆してしまう。

 

そして、その翌日、班のメンバーの一人が首吊り自殺をしてしまう。



主人公の周囲で様々な事件が巻き起こっていくのは、他の作品でも描かれていることだし、ミステリー作品、警察小説である以上は普通のこと。

 

しかし、その過程での悲しみや暗さが異常なのである。



物語の始まりが明るいだけに、終盤の暗さとの対比が強くなり、読後の悲しみを強くしていると感じた。



登場人物に愛着を持ったら最後

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警察が犯人を追い詰めていく。

その基本的な流れはありながら、他の作品にはない展開をしていく『ハング』。

 

作品を読み進めていく中で、次々に起きる事件。

連鎖していく悲しみ。

 

登場人物に愛着を持ったら最後、おそらく読後の救いのなさに絶望することになる。

 

そんな読後感を、実感してもらいたい。